「久坂玄瑞」(武田勘治著)

ふぅ・・やっと読み終わった。久坂玄瑞の伝記。

昭和19年という微妙な時期に出版された本を、山口県のマツノ書店さんが復刻した、なかなか貴重なものです。山口県の出版社が復刻したというところに郷土愛を感じるでしょ。

太平洋戦争末期という時代背景を考えると、玄瑞の「尊王攘夷」の思想が時代の空気に馴染んだのでしょう。彼の伝記の類がいくつも、この時期に出版されています。

そして戦争が終わり、それまで日本を支配していた思想や価値観が180度変わってしまうと共に玄瑞の事も語られなくなってしまうと。もう、この昭和19年版「久坂玄瑞」の伝記そのものが歴史を語っているという気がしてなりません。


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で、本の内容はというと、久坂玄瑞の短い一生を淡々と綴っている感じです。とにかく昭和19年出版ということで旧字体がいっぱいで読みづらいのと、手紙や日記が文語体のままなので古文が苦手な私には結構きつかった!読んでいくうちにかなり慣れてきたと思うけど、理解できないところも多々。

彼の一生は、悪く言えば融通の利かない、良く言えば1本筋の通った若竹みたいな一生だったのではないかしら。同時代の坂本龍馬高杉晋作のような自由闊達な風雲児という風情ではないんです。だから、現代ウケしないのかもしれない。

でも、彼に妙に親近感を感じるのは、彼の言動にリアルな人間を感じるから。坂本龍馬なんかは、時代を超越しているような超人的なイメージでいっぱいになっています。でも、玄瑞はあの時代の空気の中で、あの時代の若者にしか送れない人生を全うした・・と思うんです。

師の吉田松陰に、自分の妹と結婚してほしいといわれて、不本意ながらその話を受けたという逸話や、運命の禁門の変の直前に、進撃に反対していたのに来島又兵衛に「医者坊主に戦争のことがわかるか!」と怒鳴られて従ってしまったり。しがらみに弱い人だったのかなあ・・というところも妙にリアルに感じてしまいます。

もうちょっと要領よく立ち回れれば・・・若さゆえの悲劇というしかないよね。ただ、私はそんな彼の純粋さ、潔さに魅力を感じているんだけどね。

今度は「その時、歴史が動いた!」を観てみます。