「ホテルローヤル」

ホテルローヤル (集英社文庫)

ホテルローヤル (集英社文庫)

ラブホテルが舞台の連作小説。作者の桜木紫乃の実家がラブホテルだった!という話は、この小説が直木賞を取ったときに聞いていて興味はあったんですよね。

確かにこの業界をよく知ってる人じゃなきゃ書けないような生々しい話もいっぱい出てきました。舞台が舞台だけに性的なシーンもたくさん。

でも、浮き彫りになっているのは、人の心の闇や空虚。辺境の地、釧路の寂しい情景がそれを象徴しているよう。この小説は時に肉体を描きながらも、あくまで「心」の小説なんです。

時間軸が現在から過去に遡っているので、その後どうなるのか、わかっている状態で読者は読み進めることになったりします。でも、わかっていてもおもしろい。どうしてこうなったのか誰でも知りたくなるから。

本の結末を途中で読んじゃう人の気持ちが少しわかりました。その人曰く「どうしてそうなったか過程がおもしろい」