「対岸の彼女」

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

初めて読む作家の作品です。角田光代直木賞受賞作。

公園デビューに失敗した30代半ばの主婦(小夜子)。働きに出れば「公園」に行かなくて済むという単純な理由で就職。就職した会社の社長(葵)が、同い年の女性で、同じ大学を出ていたこともあり親密感をもつ。仕事をしていく中で友情を育んでいく彼女たちだが・・・

女性作家が書く、よくありがちな物語なのかな・・と読み始めたのですが、葵の過去(高校時代)をうまく織り交ぜていっている構成のせいか最後まで飽きることなく面白く読めました。葵の成長物語という側面も持つ小説だともいえます。

なぜか第一印象で「この人とは仲良くなれそう」と感じることがあります。自分と同じ匂いがするという感じ。小夜子と葵がまさにそんな感じだったのではないかなと。

立場も性格も全く違うのに、本質的には同じだということは、葵の過去が物語っているのだと思います。女社会の独特な人間関係が苦手な彼女たち。私もどちらかというと、彼女たち側の人間なので、共感しまくりでした。

葵の高校時代の話は特に秀逸で、電車の中で読んでいるのに何度も目頭が熱くなり困りました・・「現在」がリアルに描かれている分、余計にノスタルジィーを感じてしまったようです。