「何者」

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

朝井リョウ直木賞受賞作。就職活動中の大学生たちの物語。

年寄りくさい話になってしまうけど、時代は変わったんだなあ。私が就職活動していた頃とは隔世の感がある。インターネットも普及してなかったし、携帯も持ってる人いなかったし。まずはハガキで資料請求(笑)

たった20年の間に・・というべきか、20年も経ったんだから・・というべきか。それくらい就活生(そもそもシューカツなんて略してなかった)を取り巻く環境は激変しているわけですが、実は根本的には変わってないんだな、とも感じたんですよね。

学校の受験は点数を取ったもの勝ち。とにかく勉強して点を取ればいい。ある意味、単純で平等でわかりやすい世界です。

ところが就活は、ちょっと状況が変わってくる。どういう基準で採用しているのか、どうすれば認められるのか、はっきりとはわからない。A社にとっては欲しい人材でもB社ではイマイチかもしれないし、どこの会社でも受けがいいという人もいれば、その逆の人もいる。

光太郎の「俺って、ただ就活が得意なだけだったんだって」という言葉がすごく印象的。確かに面接なんかは向き不向きが絶対あると思ってたな。

同時期に就活に勤しむ友人への思いが複雑になってしまうところも、すごくわかります。仲良くても嫉妬心が芽生えたり、言動に過剰に反応してイライラしたり。自分の負の感情を持て余してしまう感じ。

昔はそんな感情は日記帳にでも書くしかなかったけれど、今はネットでつぶやいちゃうんですね。やっぱりそこは昔との大きな違いかな。

自分は「何者」なのか。「何者」かになりたい。「何者」かになれるはず。そういう自意識なんてなければ、もっと楽になれるのかもしれないけれど。でも、そこでとことん悩める感受性は、嫌いじゃない。