挫折せずに読んでます。
中巻に入ると、完全に現世(うつしよ)を離れ、幻界(ヴィジョン)での物語になっています。「幻界」は人間の形をした「ヒト」と動物の形をした「ヒト」が共存している世界。ワタルは大トカゲの形をした水人族のキ・キーマや、ネコの形をしたネ族のミーナと旅の道中で知り合い、一緒に旅をしていくことになります。
「幻界」は「現世」と表裏一体。「現世」で起こっているような事が、「幻界」でも起きています。人種差別、宗教の対立、オウム真理教のような怪しげな宗教や、北朝鮮のような国も登場します。
ワタルは旅の途中で何度も危ない目に会いますが、一番怖かったのが「嘆きの沼」で石の赤ちゃんに追いかけられる場面。その赤ちゃんはワタルから幽体離脱(?)したもう一人のワタルが殺した「妊婦」のおなかにいた赤ちゃん。その妊婦は妻子ある男の子供を身ごもっていたのですが、「現世」で母親を苦しめていた父親の愛人に生き写し!実際、その愛人も妊娠していたのです。これは、もう暗示的ですよね。
運命の塔を目指して、動物の形をした「ヒト」と旅をする・・というと西遊記みたいですが、物語は段々、深刻になってきています。今、アニメ映画が公開されていますが、よく2時間やそこらで、この話をまとめたなと思いますよ。結末がわかっちゃうんで観ませんが。
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/05/23
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