「そして、バトンは渡された」

 

 

複雑な家庭で育ちました。という主人公が出てくると、不穏な香りが漂うというか不幸の匂いがするというか。そういったことを期待?してしまうかもしれないけれど、この小説は違う。

記憶もないような小さいときに母を亡くし、小学生のとき父親が再婚。その後も様々な状況の変化があり、高校生の今は血のつながりのない3人目の父親と二人暮らしの優子。

 

他人から見れば「かわいそうに。大丈夫?」って感じになっちゃいそうだけど、当の本人は全然そう思っていない。「私の苦労ってたかが知れてる」「周りが期待するような悲しみや苦しみとはどこか違う」とあっけらかんとしている。

彼女には父親が3人、母親が2人いるけれど、みんな個性的で、みんな愛すべき人物でみんな彼女のことを親の心で愛している。

3人目の「お父さん」森宮さんの変人っぷりはユーモラスだけど、受け入れられない人は受け入れられなさそう。そんな彼の中にある本当の優しさに優子は気付いているから、自分のことを全く不幸だと思っていない。

優子の素直さや純粋さが魅力的。複雑な家庭環境なのに・・いや、家族の構成が目まぐるしく変わり他人と暮らすことが当たり前だったからこそ、他人に対しておおらかになれるのかな。

実写化するなら、今、朝ドラで主役をやってる清原果耶ちゃんがぴったり。地味だけど感受性豊かに演じてくれそうです。変人の森宮さんは草彅くんがやったらおもしろそう。

実際の映画版では永野芽郁田中圭コンビが演じるとのことです。