「与謝野晶子の源氏物語」下


下巻では、宇治十帖の後半部分、薫と浮舟と匂宮の三角関係が濃密に描かれております。

薫は死んだ恋人に似ている(姉妹である)浮舟を新たに恋人にする。が、亡き恋人に比べると、そんなに深い愛情はないみたい。(というか、もともと淡白な性質だからか?)

薫の親友でもありライバルでもある匂宮は、自分の妻と薫の関係(この2人はまたしてもプラトニックなんだけど・・)を疑い嫉妬する。その腹いせ(?)もあったのか、薫が宇治に隠していた浮舟を、かなり強引に寝取っちゃう。

浮舟は浮舟で、薫の愛の淡白なところに物足りなさを感じていて、全く正反対の匂宮の情熱的なところに魅力を感じるようになってしまう。そしてそれは、選べぬ二股に発展し・・・

・・本当に、これはもう昼ドラでしょう。でもね、3人の内面描写がかなり細かいので、読みごたえありましたよ。妙に現代的で、光源氏のお話とは若干、趣が異なる気もするけれど、寧ろこの「宇治十帖」の方が私には面白かったかも。


源氏物語全54帖を通しで読んでみて(抄訳ではありますが)感じたのは、人間の内面って1000年経っても変わらないんだなということ。同時に、やっぱり今の時代とは大きく異なる部分もいくつか発見しました。

この時代は不平等極まりない世の中だったんだなということ。本当の「格差社会」。父親が立派な身分の人でも、母親の身分が低ければ出世ができないとか。ある程度の身分の人たちだけが恋愛にうつつを抜かしていられる。

あとは、この時代、恋愛っていっても、ほとんどレイプなんじゃないのっていう・・・今の時代ならみんな逮捕されちゃうんじゃないか?でも、女性の立場も弱い上に、身分の高い人には逆らえないからね。だから、薫と「あげまき」とのプラトニックラブが印象に残るのかも。(でも、強引な匂宮に魅かれてしまった浮舟の気持ちもわからないではない)

とにかく、いろいろな意味で楽しめました。恋愛小説としても、当時の時代を知る上でも。もう10年早く読んでいても良かったかな。