「コンビニ人間」

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

なんともシュールな話だ。

「自分の個性を出したい、普通じゃいやだ」というのはよく耳にするけれど。この物語の主人公は全く逆。子供の頃から変わった子供と言われ「普通」に憧れる。

大学生になりアルバイトを始めた場所がコンビニエンスストア。仕事内容はマニュアル化され、様々な年代、性別、性格のアルバイトたちが同じ制服を着て、同じ対応をすることが求められる。

ここで、やっと「世界の部品」になることができたと主人公は喜ぶ。私が大学生くらいのときには「世の中の歯車」になんかなりたくない!なんて息巻いていたけれど、そう思うことこそが「普通」の感覚だと思っていたのかもしれない。

主人公は大学卒業後もコンビニでアルバイトを続け、18年の年月が流れた。そして「白羽さん」という、「普通」じゃない感じの新人アルバイトが採用される。その白羽さんとのやりとりもシュールで・・

どんな話をしていても「今は縄文時代と変わらない」という結論になる白羽さん。確かにそれはその通りかもと、クスっと笑ってしまう。

個人主義だといいながら、ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはムラから追放されるんだ」まさに。

主人公ほど個性的な人はもっと自分の個性を生かした何かができるんじゃないか、と思ったりするけれど、本人は画一的な「コンビニ人間」として生きることに喜びを見出している。「自分の場所」と言えるものを明確にもっていることは幸せなことかもしれない。

いろいろ考えさせられる作品でした。