「ブレイブ・ストーリー」下巻

6月の中旬くらいから読み始めた「ブレイブ・ストーリー」、やっと下巻を読了しました。
本当に長い長い旅でした、私にとっても。ひと夏をワタルと一緒に旅していたようなものです。上巻を読み終えた頃には、最後まで読み切れるか心配だったのですが、幻界での旅が続けば続くほど面白さが増してきて、下巻を読む頃には逸る気持ちを抑えながら大切に読んでいきました。
ワタルとは別行動で同じ幻界を旅していた、現世での同級生ミツル。彼の願いは、父親に殺された妹の命を蘇らせることでした。様々なことに疑問を持ちながら旅を通して成長したワタルとは対照的に、自分の願いをかなえてもらうことだけを考えて行動したミツル。やがて、ミツルは最後の宝玉を手に入れるため、幻界全体を揺るがすとんでもない事をやらかし、ワタルより先に「運命の塔」に辿り着きますが・・・
中巻で出てきた、「もう1人のワタル」あれが、やはり大きな意味を持っていたようです。彼の中の憎しみ、自分だけが幸せになりたいという思い。最終的にはワタルは、その「もう1人のワタル」に打ち勝ちますが、ミツルは憎しみが強すぎて勝てなかったんですよね。ワタルよりも悲惨な過去を抱えているから可哀想だったけど、それでも自分の中の「悪」に打ち勝たなければならなかったんです。登場人物は子供ですが、これは人間の普遍的なテーマであると思います。心の中の「悪」を絶つことが、犯罪を無くし、戦争を無くすことにもつながります。
冒険物として楽しく読ませながら、そういう重いテーマを描けるというのは、素晴らしいと思います。やはり、宮部みゆきはすごい作家です。最後まで読めないかもしれないなんて書いてすみませんでした・・
ラストも本当にすっきりしました。美鶴(ミツル)はどうなったんだろうと、気になりますが、それをオブラートに包んでいるところに優しさを感じました。

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)