劇団民藝公演「巨匠」

昨年10月の「らくだ」に続き、大滝秀治主演の舞台を昨日、観劇しました。俳優座にて。そういえば大滝さんは「らくだ」で芸術祭大賞に選ばれたんですよね。

第2次大戦中のポーランド。廃校になった学校でナチスに怯えながら暮らす5人の「知識人」たち。ある日、ナチスがやってきて列車爆破事件の不条理な見せしめとして知識人5人のうち、4人を銃殺するという。その内の1人の自称「俳優」の老人はもっていた身分証の簿記係という記載から「知識人」とは認められなかった。

そのまま、おとなしくしていれば命拾いするはずだった。だが、彼は自分の「俳優」としてのプライドを賭けて、ナチスの目の前で「マクベス」の一節を演ずる。それを目撃した俳優の卵にとってそれは「巨匠」の演技そのものだった・・・

・・・よく寝食を忘れて物事に没頭するっていうじゃないですか。生きる為には食べることや寝ることの方が必要なハズなのに、自分の情熱を傾ける対象が「生」とは違うベクトルにある。その究極がこの「巨匠」なのかと。

この「巨匠」の役は、かなりハードルの高い役。大滝秀治くらいの俳優さんじゃないと説得力も迫力も出ないでしょう。彼の迫真の演技に感動して涙し、さっきまで日常を生きていた人々が、不条理にあっけなく殺されていく描写に涙し・・・

約1時間の短い舞台でしたが、心に残る、人に薦めたい舞台でした。