「世に棲む日日」(三)

新装版 世に棲む日日 (3) (文春文庫)

新装版 世に棲む日日 (3) (文春文庫)

長州藩尊王攘夷は過激さを増し、やがて蛤御門の変、四ヵ国艦隊との戦いにエスカレートしていく・・

蛤御門の変では、久坂玄瑞が自刃。松下村塾では高杉晋作と同じくらい吉田松陰に評価されてた人物だったのに・・生きていたら、この後、どんな働きをしたのでしょう。

この小説を読むまでは、久坂玄瑞蛤御門の変を指揮してるくらいに思ってたのですが、逆に過激化しすぎた同志を抑える努力をしてたんですね。知らないことが多すぎる!

井上聞多(のちの井上馨)の活躍も読んでいて気持ちよかったです。彼も徹底した攘夷派だったのですが、伊藤俊輔(のちの伊藤博文)とロンドンに留学し、あっさり開国主義に転じちゃった。今の日本は欧州には勝てない、開国して学ぶべきことを学ぶべきと思ったのでしょう。

そして、長州が外国艦船の砲撃を始めたということを聞き、それを止めさせる為に日本へ帰国するのです。この時の「攘夷」一色の長州で「反攘夷」を唱えることなどは、今風の言葉で言えば「空気読めない」ってこと。暗殺されちゃうかもしれない。

それでも、井上聞多は自分を曲げなかったんだよね。自分の利益のことは考えず、藩、いやもっと大きく日本国のことを考えていたのかも。

ところが井上の説得にもかかわらず(井上の言うことがわかっていながら)藩主や重臣たちは「攘夷断行」という大布告を出してしまう。要するに藩内の「空気を読んだ」ということ。

司馬氏はこのときの情況を、太平洋戦争を始めたときの流れとそっくり、と書いておられます。そして「これが政治的緊張期の日本人集団の自然律のようなものならば、今後もおこる」とまで。

なんか、おっそろしくなってきたよ・・