「海辺のカフカ」下巻

去年から読んでいた「海辺のカフカ」読了しました。

正直な所、私はこの小説を半分も理解できていないように思います。が、よくわかんないなりの見解。

この小説のキーワードはメタファー(暗喩)。起こった数々の出来事は、現実的にというよりも、暗示的に繋がっているということなのでしょうか。

子供の頃、家庭内で日常的に暴力を受けていたらしい「ナカタさん」。なにもかもが歪んでいる中で育った「僕」。

「ナカタさん」の記憶が消えた長野の森。「僕」を兵隊2人が奥へ導いた四国の森。

多くのユダヤ人の命を奪ったナチスによる大虐殺。理屈でも論理でもなく、わがままでもなく「決まり」なので大量の猫を殺し、その心臓を食べ、その首を集めるジョニー・ウォーカー。

「僕」の物語と、「ナカタさん」の物語、2つの物語が別に進行していく中で、相互にリンクし、ラスト近くで1つになっています。

「僕」のお父さんを現実的に殺したのは誰か。「僕」の現実のお母さんは本当に「佐伯さん」なのか。そういう現実的な事が気になってしまったのですが、そういった疑問はこの仮想現実的小説世界においては封じ込めた方がよいのかもしれません。

どこか抽象的な話であるが故に、全体を通じて登場するやけに具体的な食事のシーン等が、読者を現実に戻してくれるようです。

登場人物の中で、現実的にいそうな人物として感情移入できたのが星野青年。彼が「ナカタさん」に引かれていく過程が良かったです。「ナカタさん」がとても魅力的な人間に描かれていて、私も「ナカタさん」と旅がしたくなりました。

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)