「あの家に暮らす四人の女」

 

 この本に出会ったタイミング。それが私にとっては重要でした。

この小説は古い洋館に暮らす四人の女の物語。37歳の刺繍作家の佐知とその母親、佐知の友人の雪乃、多恵美の同居生活を描いています。

佐知には父親がいない。その理由についてはおいおい語られることになるのですが、いないはずの父親が実は物語のなかで大きな存在感を放っていくことになります。

河童のミイラ(のニセモノ?)に父親の魂が乗り移るシーン。父親の佐知へのせつない思いがあふれる一番の見せ場。うっかり電車で読んでいて涙が滲んでしまったわけですが・・

実はその前日に長年、音信不通だった父親が亡くなったという知らせが私のもとに来たばかりでした。その次の日の朝にこのシーンは反則だろうと(笑)

一緒に住んでいようと、離れていようと、他の人にはわからないその親子だけの思いがある。私はそう思っています。

絶妙すぎるタイミングで、私はこの本に出会うべくして出会ったのかもしれません。忘れられないなあ。